サイドフロートとは
サイドフロートRC-Aを装着した走行イメージ
サイドフロートとは、船の側面に取り付ける浮力体のことをサイドフロートと呼びます。
サイドフロートとホープは切っても切れない間柄ということをご存知でしょうか。サイドフロートの歴史=ホープの歴史ということについても説明していきます。
サイドフロートの素材もさまざまなものが使用されており、弊社ではPVC製のものを採用しています。なぜ、PVCを選んでいるのか理由を見ていきましょう。
サイドフロートの歴史
サイドフロートの歴史とホープの歴史は密接に関係しています。
1970年5月 株式会社ホープの前身となるホープ化工株式会社(以下 ホープ化工)が設立されました。ホープ化工ではFRP製小型ボートだけでなく、小型ヨットや、ディンギー、分割型ヨットなどの製造を行なっていました。ボートに乗る中で最も危険なのが転覆です。重心の変化や波の影響などによって大きく傾くと海水をすくってしまい、転覆するリスクは、ミニボートにおいて切っても切れないものでした。そのような中開発されたのがサイドフロートとなります。1970年代後半に開発されました。
1970年代 ビニール製サイドフロートを取り付けた様子
このように、ホープはボートを製造し始めた初期の段階からサイドフロートを開発し制作を進めてきました。
その期間およそ50年!他社とは比べ物にならないほど、圧倒的な時間をかけて開発されたサイドフロートが現在も愛される理由の一つとなります。
平成15年には実用新案を取得し、名実ともにサイドフロートの生みの親としてホープが認定されたことになりました。
サイドフロートの変化
1気室のサイドフロートⅢーB
歴史を追うごとにサイドフロートも様々な変化を遂げてきています。
ビニールで作られたサイドフロートにはじまり、様々な形状や材質の変化を遂げ、現在のPVCを使用した2気室製サイドフロートやチューブボトムガードを採用した救助用サイドフロートなどが開発されています。
レジャーだけでなく、救助用途としても使用されているサイドフロート。楽しい時間だけでなく、過酷な環境でも使えるよう工夫を凝らし、進化を遂げてきました。全ては、「たくさんの人に喜びを感じてほしい。船を、そして海で楽しく遊んでもらいたい」という思いから作られ、現在もたくさんの人に使用されています。
PVC製サイドフロートのメリット
2気室のサイドフロート2000
PVC製のサイドフロートの特徴を見ていきましょう
1. 小さく折りたためる
2. 軽量である
3. 浮力がある
4. 修理が可能である
5. レスキューチューブとして使える
以上の点がPVC製サイドフロートの特徴となります。
PVC製というのはいわゆる、インフレータブルボートと同じ素材となります。空気を注入して形を作るタイプなので運搬時や収納時はコンパクトに折り畳むことができます。他の素材に比べ、軽量でコンパクトになる収納性は比べものにならないほど便利な機能です。
また、空気を入れるインフレータブル式なので非常に浮力があります。物自体の重量が軽く、空気が入る容量も多いため、サイドフロート1本あたりおよそライフジャケットの10倍以上の浮力があります。そのため、いざという時にはレスキューチューブとして活用でき、水面の救助者に向けて投げ渡すことで救助用具として活用できます。インフレータブル式なので、人に接触した際にケガのリスクも少なく、持ち手がついているので捕まることも容易になります。災害救助用具として活用する観点からも、インフレータブル式のメリットはとても大きくなります。
よくある質問の中で、「釣り針や牡蠣などで穴は開きますか?」と聞かれることがありますが、インフレータブル式のため、可能性はありますが、修理も容易であり、針の穴程度であれば一般の方でも修理可能です。また、サイドフロートに布でも被せることで、チューブを保護することができるので、対策も容易となります。
弊社のサイドフロートは従来の1気室のものではなく、2気室のものを採用しています。前後に気室が分かれることで、仮に前側に穴が空いてしまっても、後ろ側の気室は生きているため、全体がしぼむことはありません。また、RC仕様のサイドフロートであれば、チューブボトムガードが付きますので、さらに安全に救助活動に臨むことができます。
チューブボトムガードのついた2気室サイドフロートRC2000DR
以上のことから分かるように、弊社のサイドフロートはただの「浮力体」ではなく、いざという時の「救助用品」としての機能を重要視していることから、PVC製のサイドフロートを採用しています
よくある質問の中で「サイドフロートっているの?」と聞かれますが、答えは「必要です」とお答えしております。ではなぜ、「必要」なのか。もちろん安全性を上げるために必要なのですが、せっかくの楽しい釣行を事故やトラブルなどで台無しになってしまうことほど残念なことはありません。海の上では天候の変化による影響を直に受けてしまい、命の危険を感じる出来事に遭遇することも稀ではありません。そのような中で、同乗者を含む人員の命を守るのは船長の仕事となります。安全に・安心して・楽しく釣行を行なうためにも必須の装備と言えるでしょう。
ミニボートにおける海難事故
ここでリジッドタイプのミニボートによる海難事故の内容を見ていきましょう
海上保安庁交通部安全対策課報告資料より転載
平成30年に発生した海難事故をグラフに表したものです。約30%が転覆による事故となっています。
転覆する理由として挙げられるのは天候の急激な変化・乗船バランス・大型船の引き波に巻きこまれるなどがあります。操船技術によって回避できることもありますが、ほとんどの場合、不意に状況が変化することが事故の要因となっています。
ここでサイドフロートがあれば、不意なバランスの変化による転覆の危険性を大幅に防ぐことが期待でき、ミニボートにおける必須の安全装備とも言えるのではないでしょうか。
ここで実際にあった例をお話しします。
以前、弊社にて親子でご来店されたお客様がいらっしゃいました。お父様は普段仕事が忙しく、なかなか子供と遊んであげられない。子供が釣りが好きなので、一緒に船の上でゆっくり釣りをしたいとのことでした。ボート・エンジン・オプションを選択していく中で、「サイドフロートって入りますか?」とご質問を受けました。もちろん安全面を考慮した上で勧めさせていただきましたが、ご予算の都合もあり、サイドフロートなしで注文をいただくことに。その後納品を終え、数日後、お父様が来店され、「サイドフロートください」とのこと。「何かありましたか?」と聞くと、「先日、早速納艇されたボートで子供と釣りに行ったんです。魚が釣れ、子供に見せたところ、子供が船体から頭を出した際に船が傾き、子供が落水しました。」とのこと。「大丈夫でしたか?」と聞くと、「救助しようとするけど、横からでは船が傾き引き上げることができなくて。。後ろからなんとか引き上げましたが、せっかくの楽しい釣行で、子供に怖い思いをさせてしまいました。サイドフロートの必要性を実感しました。」とおっしゃっていました。
片舷に男性2人乗っても転覆しない様子(合計重量 約130kg)
この事例のように、ミニボートは大きなボートと違い、非常に傾きやすい性質を持っています。また、天候だけでなく、重量バランスの変化による予想外の傾きなども起こり得るので、思ってもいないトラブルに巻き込まれる可能性は常にあるということを忘れないでください。特にお子様や、普段乗り慣れていない方と一緒に乗船される場合、勝手がわからないため思いもよらない行動に出てしまいます。気をつけていても防ぎきれない危険性も、サイドフロートがあれば安心でき、無駄に気を配る必要もないため、リラックスして楽しむことが可能になります。
何よりも安心・安全に、そして楽しい旅の思い出となるためにも、サイドフロートの取り付けをお勧めしています。